第5章 愛の月読【うちはイタチ中編】
「秀でた力があれば、争いを続ける者の間に入って止めることができるはずだと思う」
忍術やチャクラは争いのためだけにあるはずじゃない、そうイタチは断言した。
「だから、お前はお前の強くなる理由を見つけたら良いんじゃないか」
「…そうだね、ありがとう」
優秀であることに執着しているイタチの背景に、こんなにも優しい思いが隠れていることを、他の人は気づいているのだろうか。
「イタチは争いのない世界を実現するために強くなるの?」
イタチは何も言わなかったが、きっとそうなのだろうと感じた。そうじゃなかったら、あんな考えは口にしないはずだ。幼いながらも膨大な夢を描いているイタチに、いつか押しつぶされてしまうのではないかと心配する。
「私もその夢のために、一緒に頑張って良いかな?」
それなら、私は隣でその夢を一緒に実現させたい。我ながら図々しいと思うが、それでも大好きで、憧れのイタチと少しでも同じものを共有したかった。
そう言うと、イタチは驚いたように目を見開いた。だけどすぐに「ああ」と頷いてみせる。
「どれだけ優秀でも、きっと一人は限界があるから、だから誰かに頼ることも忘れないでね」
優秀なくせして忘れ物とかしちゃうし、と笑えば「それは…!」とイタチはほんのり頰を赤くした。そんな姿に、また胸がトクリと跳ねる。
「ありがとう」
イタチは静かにそう呟いた。この日を機に、少しだけ彼の内側に触れることができた気がした。