第40章 傷口に塩
「ぅああン……! ちが、違うけえ、あッ、あ!」
身体を捻って抵抗するも、瑞は気を良くして更に手を這わす。
「撫子さん……」
色っぽい顔で近づく瑞に撫子は顔を真っ赤にする。
何とか瑞を引き離すと、障子に向かって怒鳴りつけた。
「さっきから聞かれよんじゃあ! 梅、出てこんかッ!」
瑞が目をやると、障子越しの影がびくんと跳ねる。
のろのろと障子が開き、気まずそうな顔をした梅が俯く。
なまっ白い肌は赤くなり、細い足先を落ち着かない様子で擦り合わせる。
「梅さん……」
瑞が驚いた顔で呟く。
撫子は一歩前に出、パキパキと拳を鳴らす。
「何盗み聞きしよんじゃ、梅……趣味がいいとは言えんのう」
梅はひっと怯えたように瞳を揺らす。
「いえっ、あの、なかなか二人が戻って来ないので……!」
「やけち黙って聞きよってええんかのう。わしゃあそういうのが一番嫌いなんじゃ」
「だっだって、撫子さんの傷跡が性感帯なんて知ってしまったのに、どんな顔で会えばいいのか」
撫子の顔がかっと赤くなり、梅の頭に拳を落とした。
「うあう! 撫子さん、やっぱりすぐに手が出るんですから……」
梅は涙目で頭を摩る。
「やかましいわ。梅も生意気言うようになったのお、ちょっと前までこげなやったくせにの」
撫子は握った拳から人差し指と親指を立て、何かを摘むように小さく開いてみせる。
梅は赤面し、瑞がいる事もあって口をまごつかせる。
「ど、どこの話ですか……っ!」
「そらここじゃここ」
撫子はにやっとしながら梅の手を取ると、股の間をぎゅっと掴む。
梅は大きく腰を跳ねさせた。