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ねぇ

第7章 柳青藍(ヤナギ セイラン)


おばあちゃんの家業を継ぐつもりで高校の時からバイトとして入れてもらっていた。カフェ・デア。
今は経営と料理の勉強を独学でやりながら、ここで正式に働いている。今まで三ヶ日は休みにしている方針だったようだが、このカフェが神社に近いこともあり、この正月の時期こそ新規客の獲得に繋がるのではないかと踏んだため今日も開業してみることにした。
おばあちゃんは近所付き合いや親戚との交流のため、今日はいない。いつもは厨房のみなのだが今日は久々の接客業だ。いつもの制服に着替えて身なりを整える。

よし。


OPENの看板を掲げてから程なくして、さっそくお客さんがやってきた。

「いらっしゃいませ」
「おぉ、にぃちゃん。今年は三ヶ日もやってるんかい?」
「はい。お好きな席にお掛けください」
「いいねぇ。ずっと帰りにここの珈琲を飲みたいと思っていたから嬉しいよ」

通常営業でこの店はリピーター客が7割くらいなのだ。この人も常連のおじさんだ。おばあちゃん曰く開業当初からずっとなのだという。そうか。リピーター客にも需要があるのなら三ヶ日開業はやはりありかもしれない。

「では、いつものコーヒーでよろしいでしょうか?」
「ああ。よろしく頼むよ」

窓際の席に腰掛ける男性。
リンリン。とまた扉が開く音がした。
やはり意外にお客様がくるものだな。

「いらっしゃいませ」

そう言って、来たお客様を一瞥した。3人の女子、俺と同い年の。背の低い白いもこもこの服を着た子に少し睨まれた気がした。どうにも、高校の頃からこの子は苦手だ。動揺をださないように全身に力を込める。

「お好きな席にお掛けください」

俺はちゃんと笑えただろうか。

「ありがとうございます」

彼女の声が耳の奥をこだまする。何を考えているかわからない黒いコートのつきさん。彼女を見ると胸がきゅうっと締め付けられる。全部、俺が悪いんだけれど。どうして彼女は平然としていられるのだろうか。その毅然とした態度が逆に、俺を苦しめる。

奇抜な格好をした子が気まずそうに僕に一礼する。
奥の席についた。

慌ててメニュー表を持っていこうとすると、

「あぁ、えーと、注文、私がアップルティーで、あとメープルティとミルク。ランチセットで」
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