第1章 childhood days
上空からも見つからないように、咄嗟に自身の身体を魔法で生み出した桜の花びらて覆う。
残っている一際魔力の高いドラゴンはイグニールだ。
「イグニール」
「チェリアーナよ、許せ。この方法でしか、我らの子は救えないのだ」
「それは分かっているわ。
…降りてきなさい、ミア」
そうチェリアーナが言うと、イグニールの瞳が少し大きく開かれた。
ゆっくりと息を吸い込み、心を落ち着かせる。
あんなに楽しみだったはずなのに、このドラゴンの集会の後では身体中に緊張が走ってしまう。
ゆっくり足に魔力を込めて、チェリアーナの背中から足元へ跳ぶ。
「!!…どういうことだ?話を聞いていたのか?」
「私の子、ミアよ。この子は頭がとても良いの。
大丈夫、他の滅竜魔導士を上手くまとめられるわ」
『あなたが…イグニール?』
「はぁ……我が名はイグニール。
人の子よ、今の話、理解してしまったのか」
深く息を吐き出したイグニール。
チェリアーナを見上げれば、クスリと笑っている。
とりあえず首を縦に動かせば、イグニールは再び大きく息を吐き出した。
「承知した。最悪の事態が起こってしまった場合、ミアには5人の竜を宿した魔導士を集め、アクロノギア再戦に備えるのだ。
良いな。我らが子の中に潜んでいることは言うでないぞ」
『わかり、ました…』
そう頷けば会話は終わり、大きな褐色の竜イグニールは淡い桜色の竜チェリアーナへ柔らかい言葉をかける。
「我に会わせる時は、ナツも一緒に、と言ったではないか、チェリアーナ?」
「ふふ。今日でなくてはいけなかったのよ。
ナツはミアと歳が近いのよね?楽しみだわ」
「あいつに今日の話は理解できぬわ。…また、この場所でな」
「えぇ…ミア、乗りなさい」