第1章 childhood days
「これ全部、竜の卵か…?」
『そう、なのかな…?』
「ここがオトナシの町で合ってんだよな」
『合ってるはずだよ…な、なんだか、嫌な感じが…』
無数にある卵は、孵った後のようで割れていて、けれど、近くにドラゴンの気配は無い。
岩山の麓にある町は、確かに建物は見えるのだけれど人は誰もいないのだ。
怖くて身体が…
「大丈夫だミア。俺がついてる」
!!
きゅっと繋がれた手に泣きそうになりながらも、イグニールの名前を呼び続けるナツに着いて歩く。
私1人だったら、絶対に引き返していた。
『ありがとう、ナツ』
私のその小さな声は、ナツのイグニールを呼ぶ大きな声によってかき消される。
私、ナツが居ないと弱くてダメだな
「ミア、イグニールどころか、人もいねぇな」
『う、うん…』
そう空っぽの建物達を見つめていたその時、
[少年少女よ]
!!!
ナツの声じゃない!
『だ、誰!?』
「ツボが喋ったのか!?」
[私達はこの町に住んでいる者だ。どうも]
信じられない光景に目を疑う。
帽子を被った人型の影が、丁寧に挨拶してきたのだ。
思わずナツの手をきゅっと握る。
『ふ、ぇ…影が喋った…!?』
[違う違う!ヒドゥンという魔法のせいで姿が見えなくなってしまったのだ]