第1章 childhood days
『そんな、の…断れないよ』
私がそう言って顔を上げれば、赤い顔のグレイはフッと笑って深く息を吐いた。
「はぁー、まじ良かった!
俺のことはあんま気にすんな」
『む、無理だよ!』
「意識してくれんなら大歓迎だけどな」
『〜〜〜!!』
緊張混じりに顔を赤くしていたグレイは次第に居なくなり、いつものグレイがそこに居て、逆に私は、グレイの前でいつも通りではいられなくなってしまった。
余裕そうに微笑む彼を少し睨めば、持っていたスプーンを奪われて、食べかけの朝ご飯が私の口の目の前まで運ばれる。
た、食べさせられてる…!?
スプーンを奪い返す事も考えたけれど、生憎、今は手汗が凄くてグレイの手に触れたくない。
恐る恐る口を開いて食べようとすれば、私の朝ご飯はグレイの口に放り込まれてしまって、
『ひ、ひどい!』
「食うのおせーのがわりぃんだろ」
『グレイのばか!スプーン返してよ…!』
響き渡る私の声と、楽しそうなグレイの笑い声に近くにいたギルドメンバーが集まってくる。
今、顔赤いから誰にも見られたくないのに…!
「食べ終わったら特訓しに行こうぜ」
『やだ、グレイ服脱ぐもん』
「じゃあ俺が特訓相手になってやってもいいぜ?グレイ」
『マカオ!今すぐグレイを連れてって!』
「桜姫がご立腹じゃねーか、ほれ、行くぞグレイ」
「はぁ!?勝手に話進めてんじゃねぇ!離せ!おら!」
2人がギルドから出ていくのを確認し、周りのギルドメンバーにも苦笑いしながらようやくご飯を食べ進める。
マカオが連れ出してくれて良かった…