【チェンソーマン】民間デビルハンターはヒロフミくんに愛される
第3章 隣同士の理科室
スライドガラスの上に細胞を乗せた後は、私が作業を引き受ける事にした。採取から作業まで任せるのは流石に申し訳ない。
酢酸カーミンを一滴かける。これで核に色がつくらしい。
カバーガラスをかけるところまでは良かった……のだが。
(さ、細胞がどこにも見えない……!)
いざ覗いてみると、どこにも細胞がいないのだ。
そんなはずはないとスライドガラスを置く場所の上にあるレンズ的なやつ(名前を忘れてしまった)を変えて試してみるが、それでも見えない。
顕微鏡の高さを変えても、スライドガラスの位置をずらしてみても、結果は変わらなかった。
中学最初の中間テストで顕微鏡の各部分の名前や使い方がテスト範囲にあったから必死に覚えたが、高校生である今は完璧に忘れてしまっている。
というか、多分テストが終わったと同時に忘れたまである。私の記憶力って一体……。
覚えていない事を理由に、今まで実験の時は同じ班の子に顕微鏡関係は任せてたからなぁ……! しかし、今悔やんでもどうにもならない。
顕微鏡と格闘していると、ふと横から、
「苗字さん」
と声が聞こえてきた。
「よ、吉田くぅん……!」
顕微鏡相手に苦戦しているのが情けないと思う気持ちと、声をかけてくれた嬉しさが綯い交ぜになり、感情がぐちゃぐちゃになった。
きっとぐちゃぐちゃなのは感情だけでなく私の顔もだろう。情けない表情をしているに違いない。
そんな私に吉田くんは、
「はは、顕微鏡だね。ちょっと見せて」
と言い、こちらに身体を寄せてきた。