第1章 いちごたると
戻ったそこには、苺タルトの横にショートケーキがひとつ並んでいた。
白の生クリームに苺がひとつ乗った、少し小ぶりな、不思議と上品に見えるショートケーキ。見た目は普通のお店のものと変わらない。
雪は首を傾げてそれを見る。
野薔薇ちゃん…は、ガトーショコラだし。真希さんと食べると言っていたが。
例外は多々あるが、こう言う場合は全員一緒か、男女で分かれるか学年で分かれるのどちらかが多い。
と、なると何だかんだでやっぱり真希さんだろうか。虎杖くん伏黒くん辺りのどちらかかもしれない。否、例外は多々あるのだが。
キョロキョロと辺りを見回すが、座っていない人も見当たらない人もいたりする。
誰にしろ、頭数は多くはないから然程問題でもない。
雪は椅子を引いてそこに座る。
紅茶をひと口飲んで、苺タルトを見た。艶々の赤い苺がたくさん並んでいる。
狗巻先輩が選んでくれたタルト。
ちょっとだけど、ふたりで話す事も出来てラッキーだった。
思い出すと、思わず口元が綻んでしまう。五条先生に感謝しよう。
緩む頬に力を入れながら。
フォークで苺をつつくと、不意にゴトと何か重いものが置かれた音がした。