第1章 いちごたると
先にガトーショコラを選んだ野薔薇ちゃんは流石に女子力が高い。
いつの間にかキッチンへ向かい、カップにポットと、インスタントのコーヒーや紅茶のTパックを少しお盆に揃えていた。荷物持ちだったのか、伏黒くんが机にそれを置く。
苺タルトを持った雪に、野薔薇ちゃんは訳知り顔でニヤリと笑い掛ける。ツンと肘で小突かれた。
「狗巻先輩とイチャイチャケーキ選んでんじゃないわよ」
言われて顔が熱くなる。
「ち、違……!」
笑った野薔薇ちゃんにカップを手渡される。
「私は真希さんと一緒に食べるから」
それから野薔薇ちゃんは雪の好きな紅茶のティーパックをカップに入れる。用意はされているがセルフらしい。
「えぇ…、仲間ハズレ?!」
ぶぅっと頬を膨らませて抗議する雪に、野薔薇ちゃんは楽し気に笑う。
「違うわよ。でも、雪は入れてあげないからっ」
じゃーね、と野薔薇ちゃんは雪に手を振り、踵を返して真希さんたち2年生の元へと行ってしまった。
なんの意地悪なのか…。よくわからないまま雪は野薔薇ちゃんの背中を見送った。
何だか腑に落ちない。