第5章 卒業まで
雪は小さく首を傾げた。
「…まぁ、うん。やっぱり、ダメですね」
4年間の思い出が詰まった制服だ。
簡単には渡せないと言う事だろうか。
高専の制服は普通の服とは違うと聞く。カスタムは色々可能だが、校章としてのボタンは必ず何処かに付けられていた。それなりに意味がある。
……のだろう。
と、いつも思うが実は雪もよく知らないし、実際制服は任務で破れたりする事も多々ある。
「…………」
ドラマなんかでよく見る第二ボタンに、ちょっと憧れていたのは事実だ。
もらえないから何かが変わるわけでもないけれど。
はぁ、とため息を吐く雪の頭に、狗巻先輩の掌がぽんっと乗った。
温かくて大きな掌。
「ツナー。いくら?」
そんなに欲しい?
言って狗巻先輩は雪を覗き込む。
その意図はあまりよくわからない。単純にまた、揶揄われているだけなのだろうか。
…よくわからない。