第5章 卒業まで
雪はぎゅっと唇を噛んだ。
「狗巻先輩。明日の卒業式が終わったら、第二ボタンもらえませんか?」
向き直り、少しだけ雪よりも目線の高い狗巻先輩を見上げる。
先輩は少しだけ考えて、壁に掛かった制服を見た。
「…おかか」
「…………?」
一瞬、断られた事に理解が追いつかなかった。
「…え?えぇと、、」
否勿論、彼女だから絶対もらえる物でもないけれど。
先輩はいつも優しいから、何となく「しゃけ」と返されると思っていた。
「…あ。もう誰かにあげる約束してますか?!」
真希さんか、パンダ先輩あたりだろうか…。
仲が良い先輩たちなら交換の約束もあり得る。でも、それはそれでちょっと悔しい。
けれど。
「おかか」
先輩は事もなさ気に首を振る。
「……違うんですか?」
「ツナ」