第4章 オモチャの指輪
「……梅干し、ですね…」
狗巻先輩の語彙にはないおにぎりだった。
蓋を開けた狗巻先輩からはそれが見えているのか見えていないのか。
声を上げたのは雪だった。
狗巻先輩は蓋の開いたおにぎり形カプセルをひっくり返してまじまじとその指輪を見る。
「…おかか…!!」
少しムッとした表情で梅干しに文句を付ける狗巻先輩。
雪は思わず笑みを浮かべる。
「残念でしたね…でも、」
梅干しも可愛いです。
と、言い掛ける雪の言葉を止めて、狗巻先輩はもう一度財布を取り出す。
「あ、ぃ、狗巻先輩…?」
百円玉をまた3枚取り出してカプセルトイの機械に投入した。
雪は小さく声を上げる事しか出来なかった。
「ツナマヨ」
言って再びそのレバーを回す。
がこん。
さっきと同じように音を立てて落ちて来たのは、また三角のおにぎりの形のプラスチックだった。
「しおむすび」
「…ですね」
デジャブのように、再びふたりでカプセルの出入り口を凝視した。
狗巻先輩はおにぎり形カプセルを手に取る。ペリペリとテープを剥がして雪を見た。
「こんぶ?」
「ツナマヨ…だといいですね。でもせっかくなので、梅干し以外なら何でもいいですけど…」
狗巻先輩はそれに頷いてから、カプセルを開く。
ぱかっと、カプセルが開く音。
中に入っていたのは、
赤いしわくちゃの丸ーー。