第4章 オモチャの指輪
その目元がほんの少し笑った、気がした。
おにGIりんぐのカプセルトイをちらと見る。
「すじこ」
言って雪を振り返った。
「………!?」
目の前にあるのはおにぎりの指輪のカプセルトイ。座り込んでまで見ているのだから、突っ込まれて当然だ。
「あ。なんか、可愛いなぁって…思って…」
ハハっと乾いた笑いで誤魔化す。
不自然だったかもしれないが。
狗巻先輩の事を考えて見ていたなんて、口が裂けても言えない。
言えないけれど。おにぎり…と言えばやっぱり誰でも狗巻先輩の顔が浮かぶだろう。
隠し切れてはいないかもしれない。
狗巻先輩は、カプセルトイの写真に触れた。指した指先は、ツナマヨの指輪。
「ツナマヨ?」
悪戯にその顔が笑って雪を見る。
本物の意味が篭ったであろう「ツナマヨ」は初めて聞いた。
否、そうじゃない。
何で先輩はツナマヨが欲しいって知ってるんだろう。
「…いつから見てたんですか?!」
慌てる雪。
そんな雪を笑って、
「いくら」
と、適当にはぐらかす狗巻先輩。
結構初めの方から見られていた事に、雪は顔を赤くする。