第3章 Valentineday♡
「………っ!」
雪を見て、僅かに細くなった目元。
狗巻先輩は手にしていたチョコレートを自分の口元に運んだ。歯を立ててチョコレートを挟むと、パキンと小気味良い音が辺りに響く。
不恰好に半分になったチョコレート。
片方はそのまま狗巻先輩の口の中に消えていく。
「高菜」
低く掠れた小さな声。
残りの片割れを、狗巻先輩が雪の口元にそっと押し当てた。冷たくて、硬い感触。
「……んっ」
僅か開いた雪の唇に、無理矢理に押し込まれる、甘い半分のカケラ。雪は抵抗する間もなく、されるがままに口に含んだ。
狗巻先輩の指先が少しだけ雪の舌に触れて、ゆっくりと離れていく。
口の中には、甘く蕩けるチョコレートの香り。
濡れた先輩の指先は、雪の唇をそっと撫で形をなぞる。