第3章 Valentineday♡
目を逸らして俯く。恥ずかしくて顔を上げる事が出来ない。
「ツナ?」
狗巻先輩は覗き込むように雪の顔を伺う。
「ツナマヨー?」
肩口から覗く狗巻先輩のその顔は、楽しげに雪を見ていた。
雪は声すら出す事が出来ないで固まっている。
俯く雪の頬に、狗巻先輩の指先が触れた。
チョコレートを持つ手の反対側。
人差し指が爪を立てて悪戯に頬をくすぐり、滑っていく。
「………っや、…」
肌に触れるくすぐったい感触に、思わず笑みが溢れる。身体を捩って逃げ出そうとすれば、更に狗巻先輩の指は雪を追いかけた。
「……やめ、」
ーーて下さい、と。
小さく抵抗して狗巻先輩の指先から逃れるように顔を上げると。
紫の瞳と視線が交わる。