第3章 Valentineday♡
恥ずかしくてまた手元を見る。
落とした視線の先にあったのは、雪が用意したチョコレートだった。
「ツナ?」
呼び掛ける声と共に、狗巻先輩の手が雪の腰元をすり抜けて行く。ふわりと、包み込まれるように伸びた腕。
背中に温かなぬくもりを感じた。
雪の肩口から顔を覗かせて、狗巻先輩の指先が白い箱を指差した。
「高菜?」
くれないの?と、呟いた声が直接雪の耳に届く。亜麻色の髪が柔らかく揺れて、雪の頬に触れた。
心臓がまた、大きく跳ね上がる。
体術や組み手で慣れているはずの狗巻先輩の体温。でも、こんな風に不意に距離が近付くのは初めてだった。
胸がドキドキと煩く鳴っている。
触れたままの背中が熱い。
雪は何も言えず、ただ静かに頷いた。