第3章 Valentineday♡
「………?」
雪を一瞥して、笑う狗巻先輩。それからまた、鞄からカサカサと音を響かせて、隣にもうひとつチョコレートクッキーが並べられる。
タグには[狗巻くん]と書かれていた。
「これ…、ん?」
狗巻先輩は鞄からオシャレなビニール袋をひとつ取り出した。口を広げれば、中にはいくつかのラッピングされたチョコレートクッキーの袋。タグには[真希さん]や[虎杖くん]と見慣れた名前がいくつか書かれてあった。
「………??」
狗巻先輩は雪の名前が書かれたクッキーを指で摘み、差し出す。
「ツナマヨ」
どうぞ、と渡されて雪はそれを受け取った。
「これ…。もしかして新田さんから?」
「しゃけ!」
頷いて笑った狗巻先輩。
先輩は雪の手をとって、その掌を人差し指で触れた。人差し指を動かして、一文字ずつ、ゆっくりと何かを描き指先を滑らせていく。
や き も ち や い た ?
一文字ずつが繋がって、意味を理解した途端に雪は言葉を失った。一気に顔に熱が上り、茹蛸のように真っ赤になっていくのが自分でも分かる。
「……ち、違っ!!違います!!」
慌てて訂正するが、違くない…事もない…。