第3章 Valentineday♡
ずっと憧れていた、大好きな先輩。
その人が今すぐ側にいて。
雪に、触れた。
その手はやっぱり温かい。
狗巻先輩に渡さないの?と、野薔薇ちゃんにけしかけられて。渡せたらいいな、なんて用意したチョコレート。
ーーでも。
狗巻先輩の手を払って雪は机に箱を置いた。
「先輩は…、その…」
俯いて、リボンが結ばれて綺麗なままの白い箱を見つめる。
「…さっき、新田さんに貰ってたじゃ、ないですか…」
言いながら、自分の声が震えている事に気が付いた。喉の奥から込み上げるものをぐっと飲み込む。
視界がまた、少し揺れていた。
狗巻先輩は驚いた様子で言葉なく目を見開く。
ーーそんなの、私には関係のない事なのに。
何だか苦しくて。
はぁ、と息を吐いて、袖で目元を拭う。