第3章 Valentineday♡
もうこれがラストチャンスかな、と。
ほんの少し期待して。ちょっとだけ勇気を出して、チョコレートを片手に2年生の教室を覗いてみた。
先輩はいなかったけれど。
ーーここに来る前、廊下で補助監督の女性と一緒だった狗巻先輩。
雪も顔見知りの綺麗な人だった。
彼女からのチョコを狗巻先輩が受け取ったのかは分からない。
雪がそれを訊ねてどうこう言う権利も勿論なかった。
雪は狗巻先輩のプライベートをほとんど知らない。
どんな人がタイプなのかとか、好きな人がいるのかとか。そもそもだけど、付き合っている人がいるのかもしれない。
ただずっと憧れていただけで。
優しくて。
一緒に居ると楽しくて。
ドキドキして。
でも、ただの先輩と後輩。
そんな関係が壊れてしまうのも怖くて。
今更聞く勇気もなければ…、
背伸びして買った本命チョコを渡す勇気もやっぱりない。