第3章 Valentineday♡
冬の日暮れは早い。
気が付けば、陽は傾いていた。
吐いたため息は白く濁って消えていく。
「……帰ろう」
小さくひとり呟いて、見つめた白の箱はとても綺麗だった。
「…………」
次第に、白が揺れて視界がぼやけていく。
鼻の奥がつんとして、雪は溢れた涙をコートの袖で拭った。
コト、と音を立ててチョコレートの箱を机に置く。
もう一度目元を拭ってその箱を見た。白の箱には、狗巻先輩の瞳に似た色彩の紫のリボン。
それは渡せなかった、
“ただのチョコレート”。
ーーもういっそ、自分で食べてしまおうか。
そう思って紫のリボンに手を掛けてみるけれど、やっぱり解く事も出来なかった。
力無く触れた指先から、紫のリボンがすり抜けていく。