第2章 少女漫画みたいな
持っていた本を閉じ、ベッドの端に置いたその手が、マスク紐に触れた。片側の紐を外して露わになる口元には、蛇の目の呪印。
棘は雪の持っていたクッションを取り上げる。
手持ち無沙汰になってクッションを追いかけた雪の手を、棘の手が絡め取った。雪よりも大きくて、細く長い指先。
「…………っ、棘…く、」
言い掛けた名前は、その唇で塞がれる。柔らかくて温かい感触。
それは一瞬で。
触れただけの唇は、すぐに雪から離れていった。
繋がれた指先に力が入り、抵抗も出来ないまま、もう片方の手が熱くなる雪の頬を掠めていく。
トン、と小さな音を立てて雪の背を壁際に押し付け、手を付いた。
「高菜」
低く響く棘の声。その吐息は熱く、雪の顔に触れた。
緊張で閉じた雪の唇を、棘のザラつく舌がそっと撫でていく。
噛み付くようにもう一度唇を奪うと、壁についた手をそのままに、棘は雪から僅かに距離を置く。