第2章 少女漫画みたいな
雪の手元を見るその顔をチラリと盗み見れば、あまり興味があるようには見えない棘の横顔。
紫の瞳がとても近く、深いその色がとても綺麗に見えた。ふわと香る大好きな棘の香り。
雪は手元の漫画を閉じた。
顔を上げて、隣りの棘を見る。
「見る?」
はい、と半ば強引に押し付けるように漫画を手渡した。
お腹に残ったクッションを抱き抱える。意識してドキドキと煩く鳴る胸を隠すようにぎゅっと抱き締めた。
「しゃけ」
あまり興味はなさ気だが、もたれ掛かっていた頭を持ち上げて漫画のページを捲り始めた。
少年漫画を読んでいるのは見た事があるが、少女漫画を見ている棘は初めてかもしれない。
パラパラとページを捲っていく。目線は漫画にあるが、たぶん読んではいない。
「ドラマもやってるんだよ。コレ」
クッションを抱えて、少しだけ離れていった棘を見た。
雪の声に、棘のページを捲る手が止まる。
「あ。ほら、」
雪が横から漫画を捲る。3ページ程進めた。
大きなコマ割りにヒロインと男の子。壁に背を付けるヒロインに、男の子は囲い込むように壁に片手を付く。
「壁ドンとかさー。ベタだけどやっぱりドキドキしちゃうよね」
「ツナ?」
小さく呟いた棘は顔を上げて雪を見る。
抱え込んだクッションを抱き締めて、はにかんで笑った雪は棘に気付かない。
棘はもう一度、雪の目線を追ってその漫画に視線を向けた。ページをゆっくりと捲れば、ヒロインと男の子は顔を近付ける。キラキラとした表現がいかにも少女漫画らしい。