第1章 いちごたると
つと伸ばした狗巻先輩の指先が雪の頬に触れた。ぴくりと身体が動く。
俯いて頬に落ちた雪の髪をそっと掻き上げて耳に掛けた。
ふわりと感じたのは、石鹸のような先輩の匂い。
布の擦れた音がやけに耳に残る。
塞がれた雪の視界。その影に顔を上げれば、すぐ目の前には、狗巻先輩の顔があった。
温かいその手が髪に触れて。
柔らかな唇の感触が、雪の頬を撫でていく。渇いた吐息が耳を掠めていった。
「……甘い」
小さく呟いた声に、雪の耳は真っ赤になる。
触れた頬は熱を帯び、固まって動けない雪から離れていく狗巻先輩は、また悪戯に笑っていた。