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【OP】さよなら、My Dear

第5章 ドレスローザ


船をいくつか乗り継ぎ、新世界の危険な航海を無事に終えたマルーは港から街の中心へと進む。
よく晴れていて、日差しが眩しい。
街にはそこそこ人通りがあり、オモチャで遊ぶ子供たちの姿も見えた。
新しく建てられたような家屋が多く目立ち、綺麗な景観の街という印象だ。
穏やかで明るく、生き生きとした気配がそこかしこに満ちている。
『ここがドレスローザか……思ってたより華やかだな』
賑やかな街を眺める。数年前までは噂にも聞かないような平和で素朴な貧国という印象だったが、前の王が乱心し国の長がドフラミンゴに代わってからいきなり発展しだしたらしい。
実際に来たのは初めてだが、海賊が国王をやっていると言うから殺伐とした雰囲気だろうと思っていた。
ドフラミンゴがドレスローザを拠点にしてから2年ほど経過している。
何かボロが出てないかと国民にドンキホーテファミリーについて聞いてみても悪い話が出てこない。むしろ感謝すらしているみたいだ。
『(何なんだ? 思っていたのと全然違う……)』
立派な王として国を運営しているらしい。もっと恐怖政治を強いているような悪辣な存在だと、国民たちから恨まれ憎まれ蔑まれている奴らだと想像していたのに。
こんなにも活気のある風景と人々がいては、本当に襲ってもいいのかと戸惑ってしまう。
マルーは軽く眩暈を起こしつつ木陰に寄りかかった。
街や人が何であれ、自分の目的はロシナンテの仇討ちをすることだ。そこはブレちゃいけない。
まずは身分を偽りドンキホーテファミリーの誰かと接触してドフラミンゴとのパイプを繋いでもらうべきか?
でも一国の王に会うのはそう簡単ではないだろう。忍び込んで寝首を掻く方が確実か。
『…………』
これからのことを考えつつ、マルーはポケットからタバコの箱を取り出した。
ロシナンテのよく吸っていた銘柄だ。煙を吸う趣味はないが、墓参りのときに備えたりするために定期的に買っている。今回はお守りとして持ってきた。
どうせなら久しぶりに吸ってみるか。
1本取り出し、口に咥える。
『あ……火がない』
ライターを持ってきていなかった。吸うつもりでタバコを所持していたわけではなかったためだが、何となくマルーは自身のことが滑稽に思えた。
近くの店で安いライターを買い、また元の木陰へ戻る。
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