第4章 友の訃報
あの日見つけた資料はセンゴクがまとめたものらしく非常に事務的な書かれ方ではあったが、その節々にドンキホーテファミリーを快く思っていないのが伝わってくる表現がされていた。
筆致からも、言い回しからもだ。
まるで憎くてたまらない仇に対するような……。
表面上は沈着な文章からそんなものが滲み出ているのをうっすら感じ取ったときは若干戦慄したが、子を殺された親の気持ちと考えると合点がいく。
これについてはセンゴクから真意を聞き出すわけにもいかず、どこまで行っても印象からの推測にしかならない。ともなれば他に知る相手はドフラミンゴだ。
マルーの勘はドンキホーテファミリーの誰かがロシナンテを殺したとほぼ確信しているが、勘は勘でしかないから実際に会ってドフラミンゴ本人の口から事実確認を取りたかった。
しかし、そう上手く事が運ぶだろうか。弟を殺したかどうかなんてどういう状況で聞き出すっていうんだ。一般人のふりをしても、この質問だけで敵認定されかねない。そうなれば、あっという間に倒され拘束されてしまうだろう。
確認をせずに不意討ちで襲うか?
もし違ったとしても相手はあくまで海賊。殺すのに成功したらこの世の悪を1つ減らす貢献になるはずだ。
七武海、ドンキホーテファミリー。この2つの要素にそもそもマルーの勝ち目はないが、勝てないからといって敵討ちを諦めるのは性に合わなかった。
偶然でもいいから痛手を負わせたい。あわよくばロシナンテを殺したやつを殺したい。
メバメバの実の能力と身1つでやり遂げられる可能性は低いけれど、一矢報う構えも取ることなく遠巻きに憎み続けるだけなんてできない。
『(よくもロシナンテを殺したな)』
どんなに勝機がなくとも、この遺恨1つでいくらでも殺意が湧いてくる。
要は勝つか負けるかではなく、復讐するかしないかという話だ。もちろん勝てるものなら勝ちたいが。
仇討ちを成功させるためにも油断しないように気を引き締めなくては。
マルーはすっかり水平線に隠れてしまったマリンフォードを背にして、これから向かう敵地に思いを馳せた。