第14章 お願いの理由、答え合わせ
「……えっ」
自分で言っておきながら、私はそんな声を漏らしてしまった。
冗談だったんだけど……もしかして、本当に照れてたの?
じっと零太くんを見つめていると彼は観念したようで、
「そうですよ、照れてましたよ!」
と、投げやりに言った。
「……好きな人に名前を呼ばれたら嬉しいって言うじゃないっスか。あの時名前さんの事好きかもって自覚しかけてて、だから呼んでもらう事にしまして……」
ここで、零太くんは一度息を吐いた。
「アンタに名前呼ばれて、嬉しいやら恥ずかしいやらで、その時に自覚しました。……って、俺結局全部言ってんじゃねぇか……っ」
真っ赤な顔で頭を抱える零太くん。
こんな話は初耳だ。
あの時の、不思議だった事の答えをもらった。
その答えは、とても嬉しいもので。
自分の顔がにやけているのが分かった。
「って、何にやにやしてんスか……」
「ふふ、別にぃ?」
私は昼食の用意をしようと思って立ち上がる。
キッチンに向かったところで、
「名前」
──不意に名前を呼ばれて、私は振り返った。
零太くんは、いたずらが成功した子供のような笑みを浮かべている。
「アンタも名前呼ばれて、照れてればいいんスよ!」
舌を出す零太くん。
「よ、呼び捨て……」
不意打ちの呼び捨てに私は何も言えず、ただただ赤面するのだった。