第13章 君に名前を呼ばれたい
「苗字さん、呼ばれてるよ」
ある日の十分休憩。
鳥束くんに呼び出された私は、読んでいた本を閉じて廊下に出た。
廊下には鳥束くんが立っている。
何かあったのだろうか。
「この前何でもしてくれるって言ってた件についてなんスけど」
「身に覚えがないなぁ」
とぼけているんじゃなくて、本当に心当たりがない。
最近の記憶を思い起こしてみたけれど、それっぽい出来事はなかった。
訝しんでいる私を見てこのままゴリ押すのは無理だと判断したのか、鳥束くんは、
「だってこうでもしないと、言う事聞いてもらうイベントを起こせねぇんスよ!」
と言った。
「えぇ?ㅤ考えたらありそうじゃない?ㅤ定番なのはテストとかさ」
あれだ、テストで何点以上取ったらってやつ。何度か本で読んだ事がある展開だ。
「それ、俺には実現できませんからね!?」
きっぱりと返されてしまった。
今言ったやつ以外は思いついていないから、私は口を噤んだ。
「名前を呼んでほしいんですよ」
「鳥束くん」
「じゃなくて、下の名前っスよ!」