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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第10章 彼女曰く、悪夢は二日連続で見るらしい


土日を挟み二日ぶりに会った名前さんは、誰がどう見てもぐったりしていた。
彼女はカバンを肩にかけ、持ち手をきゅっと掴んでいる。心做しか、縮こまっているように見えた。

「……どうかしたんスか?」

「それが、怖い夢を見ちゃって」

包丁を持った犯人っぽい人に追いかけられたかと思ったら、場面が切り替わって洗面所から伸びた大量の手に捕まるなんていうホラーな展開になったらしい。

「夢補正で走るの速くなってたや」

あはは、と名前さんは笑うが、明らかに元気がない。

どちらからともなく、学校へ向けて歩き出す。

「今日、家に親いないんだよね」

「えっ!?」

突然そんなことを言い出した名前さん。
俺はつい勢いよく、横にいる名前さんを見てしまった。

「親が仕事忙しいらしくて遅くまで働くから、会社近くのホテルに泊まるって言ってたの」

「なっ、なるほど……」

定番のセリフを言われてしまい、俺は内心心臓がバクバクしていた。まぁ名前さんは、そんなつもりで言ってはいないだろう。

「私、悪夢って二日連続で見ちゃうんだよね。朝誰もいないのは心細いなぁ……」

しゅんとしている名前さんを見ると、何とかしてあげたくなってしまう。

──そうだ!

「俺が今日、名前さんの家に泊まるのはどうですか?」
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