第6章 【議題】いつ〇〇しないと出られない部屋の知識を身につけたのか
「ま、まぁとにかく、このお題をこなさなきゃいけないんじゃないかな……?」
「そうですね。手、繋ぎましょっか」
零太くんが手を差し出す。私から繋げという事だろう。
「えいっ!」
私は勇気を出して、零太くんの手を取った。
零太くんは、このお題を『ぬるい』と言っていたけれど、私にとっては手を繋ぐのでもドキドキしてしまう。き、緊張する……。
「あれ?ㅤ手を繋いだのに、何も起こらないね」
「……なら」
零太くんは、器用に恋人繋ぎに変えてきた。
「え」
手を掲げて、顔の横に持ってくる。
さっきよりも絡んだ指から、体温が伝わってきた。
そして、顔が近づいてきて──。
ガチャリ。
唇が触れ合う直前。
鍵が開く音がした。
零太くんの動きがピタリと止まる。
近づいていた顔が、ゆっくりと離れていった。
未遂で終わったとはいえ、心臓がうるさい。
そんな私を見て零太くんは、
「……やりすぎましたね。行きましょっか」
なんて、余裕そうに言う。
「『手を繋げ』以外でいいでしょって思ってましたけど。こんなに可愛い名前さんを見れたから、このお題で良かったっスね」
「なっ……!」
せっかく落ち着いてきたのに、今の発言でまた顔が赤くなった気がする。
そんな私を尻目に、零太くんはドアノブに触れる。
「……せっかくなら、あのままキスしてくれて良かった、のに」
ポツリと私が呟くと、それが聞こえていたのか、零太くんは凄い勢いでこちらを振り返った。
「あーもう……可愛すぎっスよ」
零太くんが、こちらに向かって歩いてくる。
頭に手を回されて、そのまま、口付けを交わした。
「こ……今度こそ行きましょう」
「う、うん!」
自分から言い出した事とはいえ、何だか恥ずかしい。
私の先を歩く零太くんの耳が、赤くなっているのが分かった。
彼も照れているのだろう事実に、つい頬が緩みそうになる。
真っ赤になった頬を隠しながら、私と零太くんは部屋を出るのであった。