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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第4章 君の肩で眠る


通学カバンを抱き枕のように抱え、名前さんは目を閉じた。

彼女の寝息が、すぐそばから聞こえる。
自分が寝ていいとは言ったものの、いざこうなると、無防備な彼女にちょっかいを出したくなってしまう。
その欲を懸命に抑えようとしていると、ふと名前さんの体が左に傾いた。電車の揺れが原因だろう。

俺たちは、座席の真ん中辺りに座った。
名前さんの左隣には、少しスペースが空いているが男が座っている。
このままでは名前さんは倒れて、座っている男にぶつかってしまうだろう。

俺はとっさに彼女の左肩に触れ、自身に寄せた。

ふわりと彼女の香りが漂う。

密着している。彼女の体温が、伝わってくる。

また電車が揺れるかもしれないと思うと、名前さんの肩から手を離せない。

しばらくそうしていると、OLらしき女性が、俺たちに微笑ましいものでも見るような視線を向けてきた。

見られているのを実感して、恥ずかしくなる。

ああ、でも。

俺のすぐ傍で、密着している状態で眠っている名前さん。


この時間が、ずっと続けばいいのに。


──なんて、柄にもない事を考えてしまった。
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