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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第34章 エスコート、あるいは育児


「手を繋いでたら少しは安心出来ますよね?」

「ありがどゔ……っ」

「泣っ!?」

思わず涙が出てしまった。情けないやらありがたいやら……。

とにかく、鳥束くんが助けてくれるのならば私はその言葉に甘えようと思う。相手が違うとはいえやってる事は普段と変わらないから、こけることは無いはず。多分。

一段一段、慎重に階段を降りていく。鳥束くんは急かしたり文句を言ったりせずに、私のペースに合わせてくれた。
ぎゅうっと繋いでいる手に力を込める。鳥束くんは握り返してくれた。心強い。
鳥束くんの手は私よりも大きくて、ああ、鳥束くんも男の子なんだなぁと思ったり。

「つ、ついた……!」

私は、無事に階段を降りきった喜びを噛み締めていた。
既にプールサイドにいる先生はこちらに何も言ってこないので、遅刻もしていない。いやぁ、階段を降りてる最中に先生に『早くしろ』とか言われてたら私は泣いてたね。

「怪我無くて良かったっスね。……ところで、アンタ授業の時はどうしてたんスか?」

「両側から友達に手を繋いでもらってた」

「はい?」

「両側から友達に手を繋いでもらってた」

「二回言わなくてもいいっスよ!」

鳥束くんからツッコミをもらってしまった。いや、聞き取れなかったのかもと思って……。

「その光景、幼稚園児とその両親みたいっスね……」

「零太ママ……」

「…………話振ったの俺ですけど、『零太ママ』はゾッとするんでマジでやめてください」

本気で嫌そうな声だ。ママ呼びはやめておいた方が良さそう。
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