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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第34章 エスコート、あるいは育児


「…………」

何故学校のプールというものは、更衣室からプールまでの階段の段差が大きいのだろうか?
中学生の頃から感じていた疑問について、私はもう一度考えていた。
……だめだ、そういう構造だから、以外の答えが出ない。そもそも答えを知らないので、考えたところで意味が無いのだけれど。

更衣室の扉を開けて外に出る。プールサイドに視線を移すと、既にプールサイドに何人かが立っているっぽい事が分かった。

ぼやける視界にとって大きい段差は怖い。
早く行けばいいのに、私はそれが出来ずに階段の傍に突っ立っている。ジリジリと肌を焼いてくる太陽に、『早く階段を降りろ』と急かされている気がした。
まだ時間はあるけど、流石にいつまでもここにいるわけには……。

「あれ、名前さん?」

「うひゃあ!」

急に横から声が飛んできて私の肩が跳ねる。
驚いてバクバクしている心臓を手で押さえながら声のした方を振り向くと、男子更衣室から水泳帽を手にした男子生徒が出てきたのが分かった。

視界がぼやけているせいで顔が見えにくい。彼がこちらに向かって歩いてきているのは分かるが、誰かまでは理解出来ていない。

「ええっと……?」

私は目を細めた。こうしている間は、通常よりも視力が良くなるのだ。……少しだけだけど。
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