第31章 それは後の
苗字が頷いたのを確認してから、鳥束は口を開く。
「じ、実は」
「うん」
「名前さんとのエロい夢を見て、それで……目を合わせらんなくなりまして……」
「……うん?」
言われた事を頭の中で繰り返す。……エロい夢を見た?
「だから今日様子おかしかったの?」
「……ハイ」
鳥束は俯く。彼は、耳まで赤くなっていた。
「零太」
苗字は、そんな彼の名前を呼び、彼の左頬に手を添える。
優しくこちらを振り向かせ──苗字は、鳥束の唇に自身の唇を重ねた。
苗字は、すぐに唇を離す。触れるだけのキスは一瞬だった。
「……え」
鳥束は小さく声を漏らす。
「良かった。私、何かしちゃったのかと思ったよ」
苗字は安心したように微笑み、もう一度鳥束にキスをする。
「ねぇ、零太」
まさか、今日様子がおかしかったのが、こんなに可愛らしい理由だったなんて。
ああ、愛おしい!
すごく、すごく可愛くて、どうにかなってしまいそうだ。
「それ、正夢にしよっか」
苗字は立ち上がり、
「放課後、楽しみにしててね」
と言う。
(……あれ、何か、これ)
──彼女のこの表情を、俺は既に、知っている。
彼女の浮かべる何処か妖艶な笑みが、夢の中のそれと重なった。