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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第30章 惚気話の実績解除


「びっくりしたぁ……」

知予は胸を撫で下ろす。……大袈裟じゃない?

「あわよくばラッキースケベを狙うところあるけど、あれで結構良い子なんだよ?」

「それ褒めてる?」



私は、零太との馴れ初めや思い出を語った。
知予は楽しそうに話を聞いてくれて、今まで付き合っている話をした事のなかった私には新鮮だった。思わず顔が綻ぶ。

ふと時計を見ると、もう少しでお昼休憩が終わろうとしていた。
こんなに話してたんだ、と少し驚く。

「今度は、知予の話も聞きたいな」

知予が自分の席に戻る前、彼女の背中に声をかけると、
「うん!」
彼女は振り返り、はにかむように笑った。



「──という感じで……私、人生で初めて惚気けたよ」

零太と、二人並んで歩く。
放課後になったばかりだからか、通学路には私達以外にもPK学園の生徒達が歩いていた。

私が今日のお昼休憩の出来事を話していると、だんだん零太の顔が赤くなっている事に気がつく。

「顔赤いけど、大丈夫?」

「いや、あの……惚気けてた? 最高すぎて……」

零太は顔を両手で覆う。

「俺の彼女が! 可愛い!」

彼のくぐもった大声は、それでも周りを歩く生徒達を振り向かせるには十分で。

この感じ、なんだろう、既視感が……。

お昼休憩ぶりに感じる視線に、私は苦笑いを浮かべるのだった。
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