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【斉木楠雄のΨ難】鳥束だけの短編集

第27章 混浴は恋人の必須イベント


「……向かい合わせなの?」

私の質問に、零太くんは、
「え、そういうモンなんじゃないんスか?」
と答えた。
向かい合わせでお湯に浸かるのが当たり前だと思っている可能性が出てきた。そんな気がする。

「いや、あの、だって、入浴剤入れてないし……身体が……その……」

私はごにょごにょ喋りながら、零太くんから目を逸らした。

そう、入浴剤を入れていないのだ。
お湯に色がついていたならば、身体は見えにくくなっていただろう。
しかし、実際はただお湯を沸かしただけであり、それはつまり──お互いの身体がばっちり見える事を意味している。

ああ、なんで丸見えになるって気づかなかったんだ! 後悔してももう遅いけれど。

「…………」

「…………」

浴室に無言が訪れる。
目の前にいる零太くんは、口元を覆っていた。

いつまで、お互い黙っていたのだろうか。

「俺一生、この光景を忘れません」

「それは忘れて!?」

零太くんの浴室の沈黙を破る言葉に重ねるようにして、私は声を上げた。

というかヤバい、のぼせてきたかも……。

身体が火照っている。さっさと上がって水を飲んだ方が良いかもしれない。

「のぼせてきたし、私上がるね! あっ目瞑ってて」

意外に素直に目を閉じてくれた零太くん。しかし、隙を見て目を開くかもしれないため、私は素早く立ち上がって湯船から出た。

軽くシャワーを浴びてから、扉を開く。

脱衣所に片足を出した時点で、
「また一緒に入りましょうねぇ!」
と、零太くんが私に声をかけてきた。

「絶対入らない!」

……だって、もし次があったら、「こういう事するなんて言ってないよね」と言っても、君は止めてくれない気がするから。
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