第24章 増えればいいってもんじゃない
「……ん!?」
思わず声が出てしまった。一度目を擦ってからもう一度誰がいるのか見てみたが……うん。
私の目の前にいるその人物は、どう見ても高校生じゃない。大人だ。成人済みの男性が立っている。
彼はバンダナをしており、髪の色は紫。
「……どうなりました?」
こちらに問いかける声は、私の知っている声よりも若干低い。
……私は、天才でも何でもなかったようだ。
「……鳥束くん、だよね」
「は? そりゃそうでしょ」
「……いや、あのね? うん……」
私はテレビ台の隣に置いてある箱から手鏡を取り出し、それを鳥束くんに渡した。
「はぁ!?」
手鏡で自分の顔を見た鳥束くんは驚いている。違う角度からも自分の顔を見ているが、何をやっても結果は同じである。
どうしてこうなったのか。……もしかすると、『合体=鳥束くん二人分の年齢を足す』と言う風に能力が捉えてしまったのかもしれない。
つまり、今私の目の前にいる鳥束くんは三十歳くらいなのか……?
「どっどーするんスかこれ!?」
「分からない! ごめん!」
分裂はおさまって一人にはなったから、これでドッペルゲンガー的な騒動は起こらないねぇ、なんて言ってる場合ではない。とんでもない事になった……!
……かくなる上は。
「斉木くん!!」
「斉木さーん!!」
私たちは二人して、斉木くんに助けを求めるのだった──。