第22章 ほうきは意外に幅を取る
工事の音はうるさいものだ。
マンション、408号室に住んでいる苗字家。その隣の407号室でリフォームがあるらしく、最近はその作業の音が我が家に響いている。
その音の大きい事。流石に夜には工事はしていないが、割と長い時間やっているせいで勉強に集中出来ない。
そんな私の対抗策は、学校で勉強をする事だった。
ここならば工事の音を気にする事なく、勉強に集中する事が出来る。聞こえるのは精々部活中の運動部の掛け声ぐらいだ。私も頑張ろうという気になるから悪いものではない。
自習と言えば図書室のイメージがあるが、わざわざ図書室に行くのも面倒臭い私は、連日教室で宿題や勉強をしていた。
帰りの挨拶をした後に椅子に座るだけでいい。何の移動も必要ないため、面倒臭がりな私にはぴったりの勉強場所である。
今しているのは数学の宿題だ。シャープペンで数式を紡ぎ、脳内で計算をする。
ふと、運動部の掛け声に混じり、やけに教室に近い距離からバタバタとした足音が聞こえてきた。
騒がしい足音を響かせたまま、教室に誰かが入ってくる。
騒音の正体は、息を切らせた鳥束だった。
教室にいる私に気がついた鳥束は、
「ちょっと匿ってください!」
と、私に言った。