第20章 文学少女に告るなら
『苗字さん、宿題やってます?』
「ふふ、ちゃんとやってますよ。明後日を思いっきり楽しむためには、なるべく終わらせておかないとですから」
世間は夏休み真っ盛り。例に漏れず私にとっても今は休日であり、そんな休日に想い人である鳥束零太さんと電話出来る事はとても幸せな事でした。
家電なのでリビングで話している私を見かけた兄さんに生暖かい目を向けられてしまい、それに気づいた私は恥ずかしくなりつい黙ってしまいました。
『あれ……苗字さん?』
こちらの状況は電話では伝わりません。不思議そうな鳥束さんの声が耳に入り、私は自身が電話中と言う事に気がつきました。
「あ、すみません……」
「いえいえ、大丈夫っスよー。ところで明後日に何かあるんスか?」
彼に質問をされた私は、視線をカレンダーに移しました。
明後日の欄に書かれているのは『古本市』の文字。
数日前の事。楽しみにしすぎて落ち着かない私は、その気持ちを抑えるべくカレンダーに文字を書いていたのです。
去年はどうしても外せない用事が出来てしまい行けなかったので、古本市に行けるのは実に一年ぶり。
当日までまだあと二日ありますが、ふと思い出しては当日を楽しみに思っていました。
「古本市に行くんです。電車で五駅先の広場で行われるみたいで──」
「……それ、俺も行っていいですか?」