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外見至上主義に抗いを

第6章 祖母


が手を蹴られたのを見て、すぐさま食堂から連れ出したのは蛍介であった。

ー保健室ー

「先生、いないみたいだね」

蛍「うん…手見せて」

は手を差し出した。

蛍「腫れてるね…少し打撲っぽくもなっちゃってる…」
蛍介は冷凍庫を漁り、氷嚢を持ってきた。

「か、勝手にいいの…?」

蛍「分からない…けど怪我してるんだからしょうがないよ」
蛍介はそのまま氷嚢をの手に当てた。

「っ…」

蛍「ごめんっ…痛い?」

「大丈夫だよ」
は少し痛みを我慢しつつ、手を冷やしてもらった。

蛍「この傷は…さっきついたの?」
蛍介は祖母を庇った時にできた擦り傷を氷嚢を持っていない方の手で撫でて言った。

「ううん、違うよ」

蛍「そっか…」
蛍介はなぜそんな傷があるのか聞きたいと思いつつも、聞かれたくないこともあるだろうと、聞くのをやめた。

蛍「…さっき」

「うん」

蛍「人の手を借りないで行動できるのは幸せなことって言ってたけど、あれってどういうこと?」

「…」

蛍「あ、話したくないなら話さなくていいんだ」

「絶対同情したりしない?」

蛍「うん」

「絶対に私のことかわいそうな子とか思ったりしない?」

蛍「うん、しない」

「前にばあちゃんとお兄ちゃんと3人で暮らしてるって言ったよね?」

蛍「うん」

「ばあちゃん、認知症で、自分で思うようにも動けないし、考えたことも忘れちゃう。だから私とかお兄ちゃんとか誰かに導いてもらわないともう安全には行動できない。それを身近で見てるから、"普通"の体が、"普通"に暮らせることが、どれだけ幸せなことなのか、よく分かるんだ。だから、さっきちょっとむかついちゃって…アハハ…」

蛍(そうだ…健康ってだけでありがたいことなんだ…きっとちゃんはたくさん苦労したんだ…僕も辛い思いをたくさんしたけど、僕とは違う意味でたくさん辛い思いや苦労をしたんだと思う。だから人の痛みが分かって、こんなにも優しい子になったんだ。なんて…なんて強いんだ…)
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