第3章 要さんは多分推しにグイグイ行くタイプ
この状況、どうするのが正解なのだろうか……。
推しに自分の家の前で遭遇するなんて経験、今までした事がなかったから、本当にどうするべきなのかが分からない。
あっ何か、今になって緊張してきた!ㅤどうしよう!?
このままじゃ私、何しでかすか分からない!
とにかくまずは家に入ろう、落ち着こう!
「じ、じゃあ私帰るので!ㅤでは!」
「ああ、家に入らせてくれるのか?」
……ん?
この推し、今何て言った?
まるで、さも私の家に入れるかのような表現をしていたのだけれど。
私は、鍵を差し込んで回転させた。
ガチャリと音が鳴る。
扉を開けたところで、要ユウキさんが自分の体を玄関に入れようとしてきた。
必然的に、距離が近くなる。
いい香りが、ふわりと辺りに漂った。
要ユウキさんの金髪が、頬に当たって擽ったい。
「いやいや、入れませんよ!?」
危ない。雰囲気に飲まれるところだった。
私は慌てて要ユウキさんを引き剥がす。
あっ待って、これ体に触れてる事にならない!?
あたたかい……柔らかい……。
何だか変な気持ちになってくる。
これ以上こうしているのは良くない気がして、私は慌てて手を離した。
それを『家に入っても大丈夫』と捉えたのか、彼女は嬉しそうに、
「お邪魔します」
なんて言っている。
いやいや、許可した覚えはないですけど!?