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*名探偵コナン* ILOVE… *諸伏景光*

第3章 *File.3*


「もっと頼ってくれたらいい」
「ってか、頼れ」
「ふふっ。命令してる」
「ここまで言わねえと、お前には伝わらねぇだろ」

まだ目に溜まったままの涙を、陣平が伸ばした指先で拭いてくれた。

「陣平、景光。ありがとね」
「ああ。お前はこのグラサンかけとけ。下りた時に目立つとヤバイ」

そう言って、スーツの胸のポケットに入れてある、さっきまで陣平が掛けてたサングラスを手渡される、その瞬間だった。

「最初で最後」
「?」

サングラスを受け取るために差し出した腕をグイッと引かれ、視界いっぱいに飛び込んで来た、陣平の真剣な顔。

「だから、許せ」

唇が触れる程直ぐ近くで紡がれた、謝罪の言葉。

「えっ?」

その言葉は重なった唇に飲み込まれ、私の中の時間がピタリと止まった。


「まっ、松田っ?!」

見てはいけないモノを見た、と言うよりも、精神的ショックが大きい。
何故、今?
この身体では、この世界では初めてじゃないのか?
指先を絡めて街を歩いたのも、唇にキスをされたのも。
松田は次々と奪ってゆく。
雪乃の、初めてを。
間違いなく、それは計画的犯行。
相手が雪乃でなければ、こんな感情は沸かなかったはずだ。

「ったく、どんだけ可愛いんだよ。何があっても、雪乃だけはちゃんと捕まえとけよ」
「あ、ああ」

じゃないと、俺がもらう。と、松田の目が言っている。
冗談じゃない!雪乃だけは誰にも渡さない!!
オレも合わせた視線で、その意思をハッキリと伝えた。

「下りるぞ。コイツ抱えて走れ」
「言うまでもないよ」
「またな、雪乃」
「!!」

ポンと髪に触れられると、我に返った雪乃の顔が一気に真っ赤に染まる。

「ま、またね?」
「疑問系かよ。やっぱ雪乃はサイコーだわ」

松田は一人満足気に笑って、観覧車の内側から鍵を開けると颯爽と下りて行った。
瞬時にイイ男から捜査一課の刑事の顔に戻った松田を、刑事達が取り囲む。
全く、ベテラン俳優顔負けの変貌ぶりだよ。

「行くよ」

間を開けずに、オレはまだ半ば放心状態の雪乃を腕に抱えて下りると、その場を走り去った。



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