第18章 ＊File.18＊

｢⋯想いを告げる前、から？｣
｢ああ。もし雪乃がオレ以外の誰かを好きになっていたとしても、それだけは変わらない｣
｢それこそ有り得ないでしょう？前にも話したけど、私は諸伏景光。貴方に出逢うために、貴方の元へと舞い降りたんだから｣
｢オレに、出逢うため？｣
｢うん。そして、貴方を愛するために｣
｢⋯⋯｣

例えあの時、貴方が私以外の誰かを愛していても、か。
結局のところ、オレと雪乃が心の奥底で抱えてる想いや願いは同じものだ。

｢だから、景光も不安にならないで。私を信じて欲しい｣

真っ直ぐにオレを見上げる、真剣な瞳。
その奥にあるのは、深く溢れんばかりの愛情。
雪乃を愛して、雪乃に愛されて。
雪乃を信じて、雪乃に信じてもらって。

｢ああ。雪乃が傍にいないとオレはもう、生きてはいけないよ｣
｢⋯ふふっ｣

少し驚いて目を見張った後、伸ばした指先でオレの髪に触れながら、楽しげな笑みを洩らす。

｢？｣
｢一昨日、快斗に何か言われた？｣
｢⋯⋯｣

余計なトコで、変に勘が鋭い。

｢そっか。あの子はいい意味でも悪い意味でも、人の感情を敏感に読み取ってしまうから｣
｢素直に驚いたよ｣
｢景光がそう思うのなら、やっぱり相当なものなのね｣
｢工藤君とはまた、別の意味でね｣
｢二人とも、将来が楽しみ｣
｢何時もキミの周りには、イイオトコばかりが集まるな｣

放っておいてもおかなくても、本人の自覚がないトコロでわらわらと近寄って来ては、雪乃に魅力される。
そこに恋愛感情がないとしても、だ。

｢何言ってるの｣
｢？｣

繊細な白い手のひらが、オレの頬を優しく包み込んだ。

｢そのイイオトコ達の頂点にいるのは他の誰でもない。諸伏景光、アナタだけよ｣
｢！！｣

艶のある、気高くも美しいオンナの微笑みに、ゾクリとこの心が震えた。
狂喜と、驚愕に。
デートどころか、今日はもうベッドから出られそうにない。

｢煽った責任は取ってもらう｣
｢⋯煽る？｣

次の瞬間にはキョトンとした、普段の表情。
何時だって無自覚のたった一言でオレを魅了しては、オトコからオスへと一気に高みへと導く。