第15章 *File.15*(R18)
「景光は約束を守ってくれた。何があっても私の所へ戻って来るって言ってくれたの、ちゃんと覚えてる。私の方がもうダメかもしれないって諦めかけてたけど、待ってる間、景光を想う気持ちは何も変わらなかったよ。潜入捜査をしてる時は私が事前に知ってたから、まだ我慢出来たの。ずっと覚悟はしてたはずなのに、今回みたいなことが本当にある日突然やって来るんだって、今までにないぐらいに不安になって辛くて苦しくて。傍にいなくても景光はちゃんと生きてるんだから、私にとってそれが一番大切で、それだけで幸せなはずなんだって、考えるようにしてたの」
「雪乃……」
「ごめん、ね」
「何の謝罪?」
「出逢った時から、色々と面倒臭い女で」
「オレにとって本当に面倒臭い女がいたとしたら、それこそ問答無用で即刻此処から追い出してるし、そもそもが一緒に暮らさないし、愛してるなんて言わない。こうして抱き締めないし、キスもしない。抱きもしないし、プロポーズなんかするはずもない。違う?」
「違わ、ない」
「だから、そんな顔しないで」
「だって、景光が辛そうにしてるから」
「さっきまでのモヤモヤはすっかり吹き飛んだよ、雪乃が本音を聞かせてくれたお陰でね」
「……バカ」
瞬きをしたら、溜まっていた涙が頬を伝う。
「可愛い」
「何、が?」
景光の柔らかい唇が、涙を拭う。
いい歳した女の泣いた顔なんて、醜いだけじゃん。
「雪乃の全部」
「……景光は」
「うん?」
「私を喜ばせる天才ね」
「雪乃は……」
「うん?」
「オレにとって、世界でたった一人のかけがえのない人、だよ」
大きな掌が頬をするりと撫でて、唇が重なる。
「……信じてるよ、景光」
貴方の、私への想いも言葉も全て。
これから先、またお互いの身に何が起きたとしても。
景光、貴方だけは。
「!」
「……景光?」
目を見張って驚いた表情の後、安堵したように大きく息を吐いた。
「今、ストンと気持ちがラクになった」
「わっ!」
クルンと身体が回転させられて、景光の身体の上に全身乗っかってる。