第10章 *File.10*(R18)
「おはよう」
「って、一睡もしてないから!」
「まだまだ元気そうでよかった」
「何処をどう見たら、そうなるの!」
体力は限界で、バテバテくたくたのまま何とかシャワーを浴びてリビングに行ってみれば、相も変わらず爽やかな可愛い笑顔があって、思わず睨んだ。
「仕事場までの送迎はするから、ご心配なく」
「そんな心配してません!」
「はいはい。先に朝ごはんにしようか」
「……一人スッキリしてズルい」
「ん?それは雪乃もだろう?」
「?」
「徹夜したわりには、お肌も髪もツヤツヤだけど?」
「!?」
「自覚なし?」
「……」
笑顔でポンポンと髪を撫でられると、もう何も言い返せない。
だって、言葉通りに、一晩中我慢せずに抱き潰された!
「今日も可愛いから、大丈夫」
「…何が?」
椅子を引かれて、座らされる。
留守が長かったから食材がないと、目の前には海苔が巻かれたホクホクのおにぎりが三つお皿に並んでいる。隣にはインスタントの味噌汁と、お揃いの湯呑みに温かな緑茶。
私は朝はパン食派だけど、景光が作ってくれるなら、朝でも夜でも何でも食べる!
「仕事も日常生活も?それから食材もないし、帰りは一緒に買い物に行こうか」
「…うん」
昨夜から、彼の思うがままに動かされている気がする。だけど、こんな時間でさえ嬉しいと、幸せだと思うのはきっと気の所為じゃない。
「美味し」
「向こうはもう引き払う?」
「いいよ、何時でも」
「……」
「どうかした?」
「いいのか?」
「だって、未練も何も無いし」
「無いし?」
「一日に少しの時間だけでもいいから、毎日、景光と一緒にいたい」
「そういうの、反則」
「?」
「また抱きたくなる。これでも我慢してるのに」
「はい?あれだけ一晩抱いておいて、まだっ?」
「まだまだ」
「……」
ニッコリ笑った顔に、もう開いた口が塞がらない。
どれだけ?!
本気で体力底無し?!
怪我は何処行ったの??
今日からでも、普通通りに仕事に復帰出来るんじゃないの?
「冗談も程々に。そもそも私がムリですから」
「そんなことは無いと思うよ」
「ムリなものはムリっ!」
「今度試してみようか?」
「その笑顔には騙されません!」