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*名探偵コナン* ILOVE… *諸伏景光*

第1章 *File.1*


「少しは落ち着いた?」
「有難うございました。とても美味しかったです」

綺麗に飲み干した、まだ温かな紅茶のカップを受け取ったら、感情を隠したまま、抑揚のないお礼を述べられた。

「それはよかった。早速だけど、キミの名前を聞いてもいいかな?」
「私は望月雪乃。誕生日は……住所は……電話番号は……」

住所は勿論のこと、家族構成から始まり一通りの長い自己紹介を一気にしてくれた。
何故そこまで洗いざらい、全てを?
突然、真夜中の寝室に現れたキミにパニックになったオレが、真夜中なのに呼び出したゼロ達が帰った後に目覚めてくれたのは、正直助かった。
冷静になってみれば、松田がこの場にいたら、時間も場所もお構い無しにとんでもない騒ぎを起こすのが目に見えていた。
次に目覚めた瞬間と言うよりは、オレの顔を一目見るなり、彼女は完全に言葉を失ったんだ。
まるでこの現実が信じられないかのような、絶望にも似た表情で、その顔色さえも蒼白させて。
それは何故?
当たり前だが、オレは彼女とは初対面で、面識はない。

「オレの名前は……」
「諸伏景光さん、ですよね?警視庁、公安部の」
「!!」

ワザと遮るように続けられた言葉に、言い終わるより早く、オレは反射的に上半身を起こしていた彼女の細い身体をベッドに押付けて、隠し持っていた拳銃を引き抜いて構えた。

「いいですよ、私をこのまま撃ち殺しても。その方が貴方にも都合がいい。既に私は一度死んでる身ですから、もう死ぬのは怖くありません。ただ、遺体の後片付けは大変でしょうけど、それだけは私にはどうしようもないので、すみません」
「……」

ただ淡々と言葉は吐き出され、視線は逸らされることなく。
オレに抵抗することも、直に向けられた殺気に驚くことも恐がることもなく、全てを、生きることさえも諦め切った瞳で。
自らの死を、出逢ったばかりのオレに全て委ねるように。
それは何故?

「降谷零さんがいるなら、遺体の一つや二つ、この世から消し去ることなんて簡単なことでしょう?」
「!!」

彼女は知っている。
オレだけでなく、ゼロの存在すらも。
益々怪しまれると分かっているはずなのに、何故その名を出した?
起きた早々に、殺せ?
自分は……。


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