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銀色タイム

第1章 一億分の一




「おう、、朝から御苦労なこったィ。」



特徴のある言葉遣いで聞きなれた声の主は、
いつも通り意地悪そうな笑顔で此方へ向かってきた。



「沖田さん。お早う御座います。」



食堂まで一緒に行こうと、沖田さんと並んで歩き始めた。
特に誘われた訳でも、誘った訳でもないのだけれど
毎朝こうして朝食から共にするのが恒例になっている。


沖田さんは、一番隊隊長で、私の直属の上司。
土方さんとも幼少期から親しいらしく
色々と相談に乗ってもらってるうちに
隊士達の中では一番話せるようになれた。

仕事をサボったり、悪戯をしたりと
よく土方さんに怒られてるとこを見るけど、
意外と情深くて、一本筋の通った頼れる人だ。



「また失敗かィ??」



事情を言わずとも知っている沖田さんは、
いつものように同じ事を聞いた。
それに対して、私もいつもと同じ答えを返す。



「........はい。」



今まで一度も良い返事が出来た事がなく
毎朝同じ様な会話をしている。
そして沖田さんも、いつも決まって
意地悪なリアクションをとる。



「そんなんじゃ進展の見込みがゼロでさァ。」


「はぁ...。もう見てるだけで精一杯で.....」


「にしても、あの人も意外と鈍いねィ。
 毎日待ち伏せされて、周りうろつかれりゃ
 俺なら否が応でも気付くぜィ。」


「え、ちょっ、そんな言い方しないで下さいよ!
 まるでストーカーみたいじゃないですか!!」


「何処ぞのゴリラと対して変わんねぇや。」


「近藤さんと一緒にしないで下さい!」



毎朝 時間を合わせて部屋を出てくるんだから、
否定しても、しきれない。
沖田さんも本気で言ってるんじゃないだろうけど
面白半分にふざけているのは、
この嫌な笑顔を見れば伝わってくる。

こうして茶化すくせに何かと話を聞いてくれたり
相談にのってくれたりするから
正直、今だに本心がよく分からない。

最初はただのドSな腹黒かと思ったけど。
そうでもないみたいだ。
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