第2章 近づく気持ち、離れる距離
万次郎が私の膝に頭を置いて、寝転んで目を閉じている。
別に嫌とかではないけど、少しだけ恥ずかしい。
万次郎は色々凄いと関心していると、私の頬に万次郎の手が触れた。
突然何かと不思議に思って、万次郎を見るとまっすぐな目がこちらを射抜く。
「な、何?」
「って、好きな男いんの?」
突拍子もない質問に、思考が停止する。
何でそんな質問を今するんだろう。そういう話をしていたわけじゃないし、何の脈絡もない。
そう思っていたのは私だけではないようで、みんな目を点にして万次郎を見ている。
「そ、そういうの……あまり考えた事、ない、かな……」
「じゃぁ、俺と付き合う?」
「……え?」
またも突然の事に、頭が真っ白だ。
龍宮寺君と三ツ谷君が物凄い大きなため息を吐いて、松野君は目を見開いて「ええぇっ!?」と声を張り上げた。
「は、俺の事嫌いじゃないだろ?」
「あ、えと、まぁ……」
「じゃぁ、いいじゃん」
何て自由なんだろうか。勢いが凄くて、少し困ってしまう。
と、私の腕が掴まれ、グイっと引っ張られて立ち上がる。
見ると、私の空になったお弁当箱をもう片方の手に持った、場地君がいた。
「休み時間終わんぞ」
私が突然立った事で、膝から頭を落とす形になった万次郎だけど、素早く座ったのか、胡座をかいてこちらを見上げている。
「場地ー、俺今に告白してんだぞーっ! 邪魔すんなよーっ!」
「知らねぇよ。テメェはただ、を困らせてるだけだろーが、気づけ馬鹿野郎」
場地君の言葉に万次郎が「ああ?」と低く唸って立ち上がる。
場地君は、私を背中に移動させて、万次郎の前に立つ。
「やめろって、お前等。それこそコイツを困らせるって事くらい、分かるだろ」
三ツ谷君が間に入り、二人がそれぞれそっぽを向く。
何だか、私がここにいるせいで、二人が揉めるのが申し訳なくて、オロオロするしかない私の手を、場地君が掴んでそのまま屋上から連れ出された。
手を引かれるまま、私はただ場地君について歩くしかなくて。
怒っているんだろうか。場地君は黙っている。
「あ、あのっ、場地くっ……」
「お前さ、何で何も言わねぇの?」
「え?」