第1章 コルチカム
「違う見た目、言語、考え方。それだけで別の生き物として分かり合おうとしない。そんな人の子のほうが怖いでしょ?」
確かに僕も幼少期から悩まされることが多かった。失望することもあったが、それでも高校に入り友達ができた。
だから知ってほしかった。人の子も悪くないってこと。そして出来れば友達になりたい。
私はここだからと確かに西村が言っていた神社の階段下で別れた。聞き逃してしまいそうな小さな声で「送ってくれてありがとう」と言い残し階段を駆け上がっていた彼女は本当に可憐だった。
「先生。おれ以外にも妖を見ることのできる人に会ったよ。」
「ふん。また物好きに首を突っ込んで」
「 さんという名前なんだけど、先生何か知らないか?」
「神社の娘だろう。あそこは土地神を祀る結構格式の高い連中がいたはずだが、もうそれも何十年も前の話だろう。」
紆余曲折ありおれが祖母の遺品である友人帳を手にし、この大きな猫のような狸のような妖が用心棒を務めている「にゃんこ先生」だ。
にゃんこ先生はおれを見据え静かに話す。小さな子に言い聞かせるかのように落ち着いていた。
ちなみにあまりいい印象がないらしい。
「貴志君。ごはんよー」
階段の下から呼びかける声は僕を引き取ってくれた藤原夫妻の塔子さんだ。
「よっしゃー塔子の飯だー」
しっぽをふりふりと機嫌よく振りながらにゃんこ先生はダイニングに向かっていった。
今日の晩御飯は素麵らしい。先ほど天ぷらを揚げるのを手伝ったからな。
「にゃんこは天ぷら食えないからな」
にゃんこ先生に言い聞かせながら階段を下りていく。また明日話がしたいな。