第1章 よいこにサンタは来るか
【すまん、まだ帰れない。明日も出勤になりそうだ】
某チャットアプリにたった20文字だけ送られてきた文字を呼んで、膝から崩れ落ちそうになった
只今、12月24日 17時
世間はクリスマスで、しかも今年は土日にイブとクリスマスが重なっていた
こんなビッグなウェーブに世間は浮き足立ち、やれ旅行だやれお洒落なホテルでディナーだと金と愛が日本中で動いていると言うのに、私の彼は会社で動かずにパソコンと見つめあっているらしい
あ、休日出勤してるから金は動いてるのか
年末ですからね、毎年こうなのは知ってますよ
これまでもクリスマスなんてあって無いようなもので、せいぜい晩御飯をちょっと良いものにして、平日にしては珍しくお酒をあける位のものだった
でも今年こそはお洒落なことをしたり、なんならプロポーズ的なことだって期待してた
事前に月島さんとテレビを見ていた時に指輪のCMが流れれば、「憧れるなー」なんて『プレゼントは指輪をくれ』とほぼ言ってるような、察してちゃんな独り言までして御膳立てしてたのだ
ついでにセイなる夜なんて期待して、エロと言えばこの人、でお馴染みの牛山先生プロデュースのミニスカサンタのコスチュームなんて内緒で買ったりしてしまった
「何でこんな年末に産まれたんだよ!!イエス・キリストめ!!」
仏教のくせに、こんな時ばかりキリスト様に乗っかって八つ当たりまでしてやる
白々しく
【気にしないで下さい、体を壊さないようにだけしてくださいね
晩御飯だけ温めたいので、帰る前に連絡下さい】
なんて可愛い子ぶったチャットをちゃっかりと送ってからスマホをベッドに投げつけた