第1章 ~色が生まれる世界~
バスに乗り込み後ろのほうの席が空いてるのを確認すると
二人で座る
渡されたファイルを徐に開いて曲の譜面に目を通す
相変わらずちゃんと構成を考えて曲を作ってる
何曲か見ているとひとつ、目に留まる曲があった
いつも歌詞も編曲も全部やり遂げてしまうヒナ
でもその曲だけ歌詞がついていない
「あれ?これだけ歌詞がないの?」
「あーうん…なんか歌詞が書けないの」
見た感じ少し暗めの曲調っぽい
ベースがかなり前に出るような編成になってて
なんとなく僕を意識してるように見える
まさか…
「僕に書いてほしいの…?」
そう問いかけると右のまゆを怪しげに上げ、自慢気な顔で笑いかけてきた
この顔をするときヒナが悪巧みか悪いこと考えてる時か自慢話をするときと決まっている
「その通りですわぁ!流石アヤ!わかってるねぇ~」
ひょいと例の譜面が書かれた紙を僕から取り上げ
じっとそれを見つめながら口を開く
「なんだかね、この曲はアヤに書いてもらったほうがいいって思ったんだよね
アヤの気持ちをぶつけられるような曲になりそうだなって」
僕の気持ち…か
学校に着くと朝礼まで少し時間があるのでいつもの部室にベースを置きに行く
ヒナに渡された譜面も一緒においてく
ヒナにこの軽音部に誘われてから仲間が増えて
曲を書くのもいつもヒナだった
僕が書けるだろうか
この気持ちを。
教室に入ると友達に囲まれてるヒナが見える
隣の席が僕なのに少し躊躇する
どうしても女子が苦手と思ってしまう
「あ!アヤ~!そろそろ始まるよ~」
ヒナが僕に気付くとわかっているようにほかの友達を散らして
僕の席を開けてくれる
「ねぇ、木江ちゃんて鹿瀬くんと幼馴染なんだよね?」
「うん!そうだよー私のお母さんとアヤのお母さんが仲良くて
家も近いからね~」
「えぇ~?じゃあ付き合ってたり~?」
たぶん、今の僕の顔は人に見せられないくらい眉間にしわが寄ってると思う…
「う~ん、それはないかなぁ?うちの部最高のベーシストに
手を出そうなんておこがましいでしょ?」
本心から言ってるのがわかる。ヒナはそういう子なんだ
裏表のない純粋に僕のベースを好んでくれている
「そうなんだ~そんなに凄いの?」
「ふっふっ…次の文化祭はこう御期待だよ~!」
授業を始めるチャイムが鳴り
それぞれ席に着いていった。
